Active! mail 6に深刻な脆弱性、今すぐ必要な対策とは?
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ビジネスに欠かせないコミュニケーションツールの一つであるメール。しかし、便利な一方で、攻撃者にとっても格好の標的となっています。特に、メールシステムに脆弱性(ぜいじゃくせい:セキュリティ上の弱点)が見つかると、企業の情報漏えいやサービス停止といった深刻な被害につながりかねません。
今回は、株式会社クオリティアが提供するメールサービス「Active! mail 6」において、2025年に複数の重要な脆弱性が発見された件について詳しく解説します。この記事では、
- どのような問題が発生しているのか
- それがなぜ危険なのか
- どうすれば守れるのか
を、専門的な用語もかみ砕いて説明し、読者の皆さまが自社システムや利用中のサービスを安全に保つためのヒントをお伝えします。
今回発見された3つの主な脆弱性
最も深刻:スタックベースのバッファ・オーバーフロー(CVE‑2025‑42599)
■ 何が問題なのか?
この脆弱性は、攻撃者が特殊なデータをメールサーバーに送信することで、サーバー内部の動作を乗っ取る可能性があるものです。専門的には「スタックベースのバッファ・オーバーフロー」と呼ばれ、メモリ領域に不正なデータを書き込んでプログラムの流れを変える攻撃手法です。
■ どれほど深刻か?
- CVSSスコア(危険度を表す数値):9.8 / 10
- 影響範囲:サーバー全体の乗っ取りや、サービス停止
- 現実の被害:すでに カゴヤ・ジャパン社 や IIJ(インターネットイニシアティブ) など複数の大手サービスで攻撃・停止事案が報告されています。
■ 例えるなら…
イメージとしては、会社の郵便受けに届いた怪しい封筒を開けた瞬間、社内のすべてのパソコンに侵入されるようなものです。
メールのプレビューから攻撃:クロスサイト・スクリプティング(XSS)(CVE‑2025‑52462)
■ 何が問題なのか?
この脆弱性は、HTML形式のメールに悪意あるスクリプト(JavaScript)を埋め込むことで、受信者のブラウザ上で不正な操作を実行できるというものです。
例えば、
- 勝手に別サイトへリダイレクトする
- クッキー情報(ログイン情報など)を盗む
- フィッシングページを表示する
といった攻撃が可能になります。
■ どれほど深刻か?
- CVSSスコア:6.1 / 10(中程度の危険)
- 被害例はまだ大規模ではありませんが、攻撃が容易なため注意が必要です。
リンクを踏むだけで攻撃:クロスサイト・リクエスト・フォージェリ(CSRF)(CVE‑2025‑52463)
■ 何が問題なのか?
これは、ユーザーがログイン中に別の悪意あるページを開くと、勝手にメール送信などの操作が実行されてしまうという問題です。
secidというセッション管理パラメータが予測されやすい仕組みだったことが原因です。
■ どれほど深刻か?
- CVSSスコア:4.3 / 10(低〜中程度の危険)
- すぐにサーバー乗っ取りには至りませんが、攻撃者が不正なメールを大量送信するなど悪用される恐れがあります。
どう対策すればいいのか?
最も重要なのは「最新版へのアップデート」
株式会社クオリティアは、これらの脆弱性を修正した最新バージョン BuildInfo 6.61.01008654 をリリース済みです。
最も確実で基本的な対策は このバージョンにアップデートすること です。
古いバージョンのままだと、攻撃者がインターネット越しに簡単に悪用できます。
その他の防御策
よくある勘違いと注意点
「メールシステムだから安全」という思い込み
メールシステムは社内ツールという意識が強く、外部から攻撃されないと考えがちですが、実際には メールシステムはインターネットに直接接続されている ため、常に攻撃の対象となっています。
「自動アップデートしているから大丈夫」は危険
Active! mail 6 は自動アップデートされない場合もあります。運用担当者が明示的にアップデート作業を行う必要があります。
WAFだけでは不十分
WAF(ウェブアプリケーションファイアウォール)は一時的な防御になりますが、根本的な脆弱性を解決するにはソフトウェア自体の修正が不可欠です。
緊急度の高い脆弱性 CVE‑2025‑42599 は世界的にも警戒
米国政府のサイバーセキュリティ機関CISA(Cybersecurity and Infrastructure Security Agency)は、この脆弱性を「Known Exploited Vulnerabilities」(既知の悪用事例あり)リストに追加し、5月19日までに修正するよう強く勧告しています。
つまり、これは国内だけでなく、世界的に悪用されている危険な状態なのです。
開発者や管理者向け:脆弱性の技術的な背景
※参考として簡単なコード例を示します(実際のコードではありません)
// 脆弱なコードの例
char buffer[256];
strcpy(buffer, input); // inputが長すぎるとバッファオーバーフロー発生
// 修正後の例
char buffer[256];
strncpy(buffer, input, sizeof(buffer) - 1); // 長さ制限して安全にコピー
まとめ:今すぐ対応を、継続的な監視を忘れずに
今回のActive! mail 6の脆弱性は、既に実害が確認されている非常に深刻な問題です。企業や組織は以下のアクションを直ちに取ることを強くおすすめします。
✅ 今すぐやるべきこと
- Active! mail 6 を最新版 BuildInfo 6.61.01008654 にアップデート
- 監視体制(IDS/IPS)やWAFを活用して不正アクセスを検知・防御
- 侵害調査を行い、パスワード変更や二要素認証の導入も検討
✅ 中長期的に考えるべきこと
- 社内システム全体のセキュリティアップデート管理体制の見直し
- 脆弱性情報(JVNやメーカー公式サイト)の定期的な確認
🔗 参考リンク
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